会社で男女平等の問題を話すとき、「これは差別
ではなくて、区別だ」なんて言い方をすることはありませんか? 例えば男女でお風呂やトイレを分けるのは区別
、けれども昇進や仕事の割振りを男女で分けるのは差別だから駄目です、などがわかり易い例です。
皆さんは日々の仕事の中で、どこに差別と区別の境界を設定しているのでしょうか?
コピー取りを女性だけにさせるのは? お茶を淹れるのを女性がするのは? 少し迷われるかもしれません。このように考え出すと、意外とこの境界線引きは難しいものです。
これまでのコラムでもたびたび触れている通り、私が考える働く社会環境下における男女平等とは「別
の個性を持っている男女が協力して特長を活かし合い、共に働きやすい社会を築くこと」です。同じように働く社会環境と言っても、通
常の民間企業と公務員や学校の職員など公的な職場では、また少し状況が違うようです。今回は私の友人から聞いた話をご紹介しましょう。
私と同じ年の彼はある自治体に勤めています。といっても昔のお役所のイメージとはちがい、かなり厳しい職場だそうです。
彼の勤務先は広く男女平等が浸透していると聞いています。それは公的職場の役目のひとつとして、民間の手本にならなければならないからです。女性も男性に近いスピードで昇進しますし、もちろん昇給だってします。そしてその差もかなり少なくなっています。現にかつては男性ばかりだった重要ポストに、ここ数年で女性が座ることも増えているよ、との事。
性別による仕事内容にも差がなくなり、以前は男性の専門だった債権回収にも女性が割り振られるようになったり、逆に女性が大半だった経理的業務にも男性が入って来たり。また本庁の管理部門にも女性が進出し、夜通
し頑張っている姿が見受けられると言います。
人員削減と業務の複雑化・多様化がいちばん大きな理由だとは思いますが、彼の勤める自治体に希望降格制度ができたのもこのような波と無縁だとは言い切れないと思っています。公的職場が本当に民間のさきがけ的な存在なのか、その辺りは別
問題としても、見本になろうとして実際に行っている内容が「差別をしない」方向性だということは確実に言えることではないでしょうか。
彼は私の考える真の男女平等実現は理想的であると共感してくれてはいるようですが、公的職場でも、その実現は難しいよ、と言います。そんなにうまく仕事を割り振ることができない、と。区別
と差別と同じように、曖昧な部分が多すぎるのかもしれません。
「差別と区別」は「好きか嫌いか」くらい曖昧で、やはりお茶を淹れるのが嫌いな女性には「差別
」、それが嫌ではない女性には「区別」なのかもしれません。このような曖昧な基準は会社の中にも沢山あるはずです。そのことを皆さんで「考える」「話す」ことが社員のベクトルを同じ向きにするきっかけになっていくのではないでしょうか。
(株)ラッシュ・インターナショナル 代表取締役 倉田雅美子
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